金色の師弟


アデルの生き方を打算的だと言うならば、そうさせているのは自分自身。

早くに両親を亡くし、育ての親であるアイリスももういない。

幼いエルクを利用してやろうと近づく貴族たちのように信用できない人間の多かった中で、アデルだけは無条件に信じていた。

今でもそれは変わらない。

だからエルクは、何かがあるとどうしてもアデルを頼ってしまう。

今も同じだ。

世間話をするように、アデルの知恵を借りている。
そのことが、他の家臣たちにとってはおもしろくないことだと知っていてもだ。

そしてアデルもエルクの言葉に応じ、力を貸すことを惜しまない。

そしてそれが「エルクの贔屓」だと思われないように、アデルは誰にも隙を見せない。

アデルほどの人物ならエルクに信頼されてもおかしくはない。

そう周囲に思わせるように。

ましてや彼は、アイリスの息子。
兄弟のように育ってきたのだから、多少は気心も知れているんだろう、と。