金色の師弟


怒られる理由がわからず、アデルは首を傾げた。

綺麗な髪だから綺麗だと言った。

アデルにとっては、普通のことである。

「アデル、お前には婚約者がいながら……。もっと自分の立場をわきまえろ」

「婚約者とは言いますが、そんなものは一族が勝手に決めたことで、向こうも嫌がっていますよ」

婚約者の娘も、両親が勝手に組んだ話であったため気乗りしていない。

婚約者が嫌がっていることを初めて知ったエルクは、目を丸くして身を乗り出した。

「嫌がる?相手がお前なのに?」

信じられない、といった声を出すエルクに、アデルは苦笑してしまう。

アデルは随分と買い被られているらしい。

大陸一の弓使いで名門貴族で容姿端麗。

言葉を並べれば確かに非の打ち所はないが、それと恋愛は別だ。

「彼女には想い人がいるようです。だから、私たちは婚約解消同盟を結んでいるんですよ」

目を閉じ、静かな口調で微笑を浮かべたアデルに、エルクは納得がいかない様子だった。