そしてそれは、メルディ王国では当たり前に行われてきたこと。
現に隊長を務めるディンは、元は傭兵団のリーダーだった。
他にも、隊長たちの中に平民出は多い。
そのような中、騎士団長はメルディ王国でも伝統ある貴族パガニ家の当主である。
そして彼は、団員全てに尊敬される実力者であった。
「実力がある者を残していくから、メルディ王国は成功したんです。少し、詰めが甘かったかもしれませんね」
二人きりのときしか見せない砕けた口調とからかうような笑顔に、エルクは子供のように唇を尖らせた。
「……む」
「……大丈夫です。今からでも間に合いますから」
微笑を浮かべたアデルにつられて、エルクもふっと頬を緩めた。
「結局、頑張りを正当に評価してやることが必要なんですよ」
志願兵制度が開始され、誰にも等しくチャンスが訪れても、無能な貴族たちが居座っていればやる気も下がる。
努力や結果を正当に評価する。
簡単なように聞こえる当たり前のことをきちんとやる。
それはやがて、信頼へも繋がる。
エルクは深々とため息を吐くと、背もたれに身体を預けた。
汚れ一つない真白な天井を見つめ、目を閉じる。
