金色の師弟


貴族制は廃れたが、貴族たちが完全に滅びたわけではない。

有能な貴族たちは今でも政治家や兵として王に仕えている。

そういった者たちは伝統ある家柄として周囲から尊敬の眼差しを向けられているのだ。

「有能な平民が入ってくれば、力のない貴族や気を抜いていた貴族はどんどん席を奪われます。そこに貴族たちが危機感を持てば、今まで怠けていた者たちの気が引き締まり、平民たちも努力次第では考えられなかった豊かな暮らしを得られるということで、高め合いが始まるのですよ」

口を挟ませないアデルの語りを、エルクはじっと耳を澄ませ聞いていた。

そして、眉をしかめると頬杖を付いた。

「こちらの貴族どもは危機感ないな」

「そうですね」

「奴らに危機感を感じさせる方法……か」

アデルは頷く。

今のシェーダに必要なのは、危機感である。

長い間安定した地位に座っていた貴族たちに、地位を脅かされるのではないかと危機感を持たせ、重い腰を上げさせる。

「……貴族数名を隊長の席から外し、志願兵の中から任命するのはどうだろうか」

真っすぐな黒い瞳に見つめられ、アデルは頷いた。

それこそが、アデルの考えていたことであった。