金色の師弟


アデルは言葉を止め、身を乗り出すように両肘を机に乗せた。

近づいてきたアデルに、エルクは一瞬視線を投げた。
だが、すぐに視線を外すと考えを纏めることに集中する。

屋敷からここまでを歩いてくる中で、すでにアデルは自分なりの案を纏め終わっていた。

口を出すとしたらそれはエルクが求めてからと決めている。

アデルは黙って、エルクの意見を待った。

「このままでは国力増加など夢だな……。アデル、何故イアンは上手くやれているんだ?」

イアンと親しいのはエルクである。

しかし、アデルはよくメルディ王国の兵と合同任務に出るため、兵たちの雰囲気をわかっている。

一人一人の兵士の質が高いメルディについて、エルクは率直な感想を求めた。

「……根本的に、メルディ王国自体が早い段階から貴族政が廃れています」

「それは、そうだな」

「兵士に政治家、どちらも才があれば身分は問いません」

それは、メルディ王国の生き残る術でもあった。

シェーダ王国ほど鉱山資源はなく、オネスト王国ほど食に豊かな土地ではない。
特徴のないメルディ王国は、何か特出した力がなければ生き残れない。

そんな状況の中で、自然に貴族は廃れ、実力さえあれば誰もが上へとたどり着ける社会へと変貌していった。