エルクも一口含み、こくりと飲み込んだ。
「ミーナから今年の葡萄は出来がいいと聞いていたが、思った以上だな」
満足そうな笑みを浮かべ、エルクは残りの液体を全て喉に流し込んだ。
その姿をアデルは黙って見つめ、エルクがグラスを机に置くと同時に口を開いた。
「それで?何を聞きたいんですか?」
エルクは浮かべていた笑みを消すと、国を背負う王としての強い瞳をアデルに向けた。
「志願兵たちの力はどうだ?」
アデルは鏡のように、エルクと同じ強く真っ直ぐな瞳を返す。
「実力は貴族出の兵たちよりも上です。……ですが、その力を上手く出し切れていません」
「どういうことだ?」
アデルは簡潔に、貴族連中と志願兵の間にある余計な上下関係を説明した。
全てを聞き終えたエルクは、テーブルに肘を付き、唇を指先でなぞる。
エルクが何かを考えるときの癖だ。
