金色の師弟

騎士団に入団したとはいえ、もとはただの平民である。

そんな彼にとって、貴族であるアデルは怒らせるわけにはいかない存在であった。

アデルにしてみれば、同じ騎士なのだから変な遠慮は不必要に思う。
年上や隊長を敬う、といった心掛けは必要だが。

しかし、貴族の中には平民が騎士となることが気に入らず妙な言い掛かりを付ける者も少なくはない。

そうなれば、彼らが怯えてしまうのも当たり前だ。

(このままでは、エルク様の望む形にはならんな)

どうしたものか、と思案するアデルの様子には気付かず、ルークは用件を口にした。

「騎士団長からの伝言です。エルク様がお呼びだそうです」

「エルク様が?」

「はい」

ふむ、と顎に触れると、アデルは明るい表情をルークへと向けた。

「わざわざすまないな。お前も遠征で疲れただろう?今日はゆっくり休め」

「は、はい!」

「明日からはまた厳しくなる。これからの成長、期待しているぞ」

アデルはぽんぽんと二回、ルークの頭を軽く撫でた。

「はい!失礼しました!」

威勢よく頭を下げると、ルークは走りながら城門の方向へと駆けていく。
その無邪気な背中が可愛らしくて、アデルは苦笑混じりにその背を見送った。