理由もなく王女であるミーナが、例え同盟国と言えども他国へやってくるはずがない。
逆にいえば、王女であるミーナが直々にやってきたということは、重要な用事があるということだ。
「気が回らず、申し訳ありません。イアン様にお伝えしてまいります!」
ルイは慌てて城へ向かって走りだした。
その懸命な背中に、ミーナとカトルは小さく吹き出した。
普段は無表情なゴードも、頬を緩めている。
「それでは、私が謁見の間までご案内いたします」
「ありがとうございます。私たちはのんびり向かいましょうか」
イアンへの報告をルイに任せ、カトルは二人を振り返った。
何故ミーナがやってきたのか疑問ではあるが、それを聞くのはイアンの役目である。
(もしかして、アルノム王が……)
オネスト王国は、現在ミーナの父、アルノムの治世である。
しかし、数ヶ月前からアルノムは体調を崩し床に伏せることが多くなった。
三国間の同盟は変わらず継続されていくが、このまま王が亡くなれば王位はミーナに移動する。
だが、王女であるミーナが一人で国を治めていくことは容易ではない。
となれば、ミーナが取るべき道は一つ。
(あー……考えるのは止めだ!)
ややこしい問題に発展しかけたところで、カトルは考えることを止めた。
心優しいミーナには、イアンと共に幸せになってほしかったのだ。
