これまでにノルンからは表面的な城の内情を送ってもらっていた。
そして、エルクを唆した張本人、デモンドからの間者の存在、城内のエルクに対する意見、そして国民の王家に対する不信感についてを探らせていた。
「婚約者なんだもの。これくらいの仕事は引き受けさせてもらわなくちゃね」
出発前にノルンが浮かべた笑顔の心強さには、アデルも感動したものだ。
お互い望まぬ婚約を結ばれているのだから、それくらいはやらせてもらえなければ、割に合わない。
ノルンの両親はアデルが持つエルクからの信頼を武器にしようと縁談を組んだのだ。
迷惑を掛けるな、と苦笑したアデルに対し、ノルンは毅然とした態度で言い放つのだ。
「初めに貴方を利用しようとしたのは私たち家よ。貴方が私を利用して何が悪いのかしら?」
「……それは、有り難い」
彼女のしたたかさには、これから一生アデルは頭が上がらなくなりそうだった。
