金色の師弟


一人きりになった執務室。
アデルは椅子から立ち上がると、月明かりの入り込む窓へと手を伸ばした。
淡い金色の光を浴びた硝子は冷たく、アデルの身体を冷やしていく。
同じ色を持つ丸い月を見上げ、思い出すのはこの国の王都にいるだろうルイの笑顔。

(エルク様とルイ……どちらも手放せない俺は欲張りなのだろうか)

弓を握り続け皮が厚くなった自分の手へ視線を落とす。
手に負えない問題を抱えているとは思わない。
拳を握り締め、目を閉じる。

現在のシェーダ国はおかしい。
メルディ国とデモンド国が手を組み、オネスト国を飲み込みシェーダ国に侵攻する。
そんな馬鹿げた話が、当たり前に信じられているのだ。
どこからエルクや騎士団長の耳に入った話なのか、アデルは知らない。
正確には、調べる間もなく制圧任務を言い渡されエルクから引き離されたのだ。