ジョシュアはアデルの考えを否定するつもりはない。
同盟国相手の戦争など馬鹿げているし、侵攻の理由も本当にメルディとデモンドが手を組んだのか疑わしい。
だから、戦争を止めたいと思うアデルの気持ちは理解出来るし、賛同する。
だが、ジョシュアにはアデルの行動は些か気に掛かる部分が多い。
何かにつけてはメルディ国を守ろうとしているように映るのだ。
もしかしたら、彼はシェーダを裏切り、メルディに寝返るのではないか。
そんな不安を、ジョシュアは抱いていた。
「……ルイがいなければ、そもそも戦争を止めたいとも思わなかったかもしれないな」
ジョシュアは思い切り頭を殴られたような感覚に襲われる。
答えたアデルが柔らかく微笑むものだから、予感が的中するような気がして、怖くなったのだ。
「……アデル、死なないでくださいよ」
副官ではなく、彼を慕う一人としての言葉に、アデルは苦笑してみせた。
「憎まれっ子世にはばかる、と言うからな。当分は大丈夫だろう」
