「構わん。俺の任務は部下を生かすことだ。特に、この部隊には新人が多いんだ。無駄な争いは避ければいいさ」
「ですが、貴方をよく思わない者たちはメルディを迎え撃つと言い出すかもしれません」
「そういう奴らには、やらせればいい。……さっきも言ったが、メルディ軍は食料の尽きる頃を狙うはずだ。食べ物がなくても元気な奴がいたら、俺は最大限の敬意を払ってやるよ」
皮肉な笑みを浮かべて肩を竦めたアデルの姿に、ジョシュアは唇を噛んだ。
何かをしようとしている。
それに気付けても、手伝うことが出来ない。
アデルが、ジョシュアの手助けを望んでいないからだ。
いつまで経ってもアデルには近付けない。
ジョシュアは、それが堪らなく悔しい。
アデルが自分より年下だということは関係ない。
ただジョシュアは、他人に頼らずに生きてきたアデルの力になってやりたいだけなのだ。
「任せたからな」
アデルの期待に、過不足なく応える。
それが、アデルの求める副官の姿。
力になりたい。
そう願っても、もどかしい想いを抱きながら任務を全うしてきたジョシュアは、今回もまた、アデルの期待に応える以上のことは望まれてはいなかった。
