金色の師弟


押し黙っていたアデルが、ふいにジョシュアを見上げた。
月を連想させる金色の瞳が、力強く輝いた。

「ジョシュア、留守は任せた」

「……!はっ!」

真っ直ぐな返事と敬礼を返したジョシュアに、アデルは微笑を浮かべる。

「おそらく、メルディ軍が砦を奪還しに動くのはこちらの食料がそこを付いてからだ。だから、その前にお前はシェーダ兵に砦を捨てさせろ」

「は……?」

「別に必死で守らなくていいだろう。ここを取ったからといって、俺たちに利があるわけでもないしな。相手に包囲される前に城を空けてしまえばいい」

無茶苦茶な指示を出す指揮官に、ジョシュアは眉をしかめて曖昧に頷いた。

「それで団長に報告すればいい。『自分達は指揮官の指示に従い、砦を明け渡しました。それは指揮官に策があってのことだと信じていたからです』とな」

「それでは、また貴方が責任を問われるのですよ!?」

思いがけないアデルの言葉に、ジョシュアは声を荒げた。
月明かりに照らされた薄闇の中に響いた声はよく通り、アデルは大げさに顔をしかめ耳を塞いだ。