「時々、お前が嫌いになりそうだよ」
「どうぞ、ご自由に。貴方とは違い報われない恋には慣れていますので」
上手い反論を見いだせず、アデルは開けた口を閉ざすとふてくされた様子でそっぽを向いた。
可愛い、と思ったことはジョシュアの胸の中にしまわれた。
「……上が撤退を考えないことは計算じゃない。考えたらわかることだ」
重々しく吐き出された声が、執務室へと沈んでいく。
「この戦いの意味が俺にはわからない。こんなことを続ければ、デモンドやドルネアが攻めてくるのはわかりきったことじゃないか」
部下に指示を出すときの澄み渡る声とは程遠い、淀み沈んだアデルの声。
やはり、アデルは何か考えがあるのだとジョシュアは察した。
ただ、迷っている。
その考えを実行すべきか否かを、迷っているようだ。
