金色の師弟


ジョシュアは、砦を制圧してからずっと疑問に思っていたことを口にした。

「……まさか貴方は、本気で補給の問題を考えずにメルディの兵を捕えたわけではありませんよね?」

かわすことを許さない紅い瞳が、真っ直ぐにアデルを射ぬいた。
メルディの兵を多く生かせば、その分多くの食事が必要となる。
すると今度は、他国へ侵攻している自軍の食料が足りなくなり、先へ進めなくなるのだ。
今朝の会議でも、食料問題から今後の進軍はなしとなった。
王都や近隣から食料を集めるにしても、進軍再開には時間が掛かるだろう。

「……そもそも、今年の収穫は良くないというのに戦争を始めることが間違っているんだ」

忌々しげに吐き捨て、アデルは身体全体を背もたれに預けた。

「今のシェーダではこれ以上は進めない。撤退する。……そう言ってくれることを期待したが、無駄だった」

「……無駄になることも、計算の上でしょう?」

冷淡なジョシュアの視線を、アデルはしばらく黙って受けとめていたが、諦めた様子で息を吐いた。