金色の師弟


「それは、そうせざるを得なかったからだ。俺は誰が相手でも、自分から誘った覚えはないな」

お前もな。
この一言はアデルの喉奥でくしゃりと潰された。

それもそうだとジョシュアは思う。
思い返せば、そうではないか。
ジョシュアは両手を挙げて、おどけた様子で降参の意志を見せた。

「そうでした。貴方は母君が亡くなってから後ろ盾を失った貴族社会で、必死に生き残ろうともがいていましたものね」

実力も知恵も、時には自分自身さえも武器にして、アデルは貴族社会を渡ってきた。
それも全て、エルクの力となるために、だ。

そんなアデルが唯一選んだ一人。
尚更、失うべきではない少女ではないのだろうか。

「……貴方はこのままでよいのですか?」

「……」

アデルはジョシュアを一瞥すると、机の上に丁寧に重ねられた書状に目を落とす。
答えないアデルに苛立ちを抑え切れず、ジョシュアは自分でも腹が立つ程に嫌な笑顔を浮かべた。

「では、貴方の想い人がいなくなれば、昔の貴方に戻るのですか?」

物騒な思考に、アデルははっと顔を上げてジョシュアを睨み上げた。
少し考えればアデルを煽ろうとしているだけとわかるはずだが、反応せずにはいられない。