ジョシュアはそっと手を持ち上げると、アデルの顔に掛かる漆黒の髪を掻き分けた。
欝陶しいと身を捩ったアデルの肩を掴み、そのまま机に押し倒そうとしたが、やんわりとアデルがジョシュアの肩を押し返した。
片手を机に付き身体を支えながら、アデルは肩を竦めて首を傾ける。
「悪いな」
「気分じゃない、ということですか?」
「違う。俺の相手はお前じゃないということだよ」
アデルは自虐的な笑みを浮かべると、自分を押し倒そうとしているジョシュアを見上げた。
「今までいろんな奴と関係を持ったが……俺が心から繋がりたいと思うのは、後にも先にも一人だけだ」
耳に心地よく響くテノールが、優しくジョシュアの耳を打った。
僅かに眉を寄せ震えているジョシュアは、傷付いているのかもしれない。
アデルは構わずに、無理矢理ジョシュアを押し返した。
「来る者拒まず去る者追わずの貴方の口から出た言葉とは思えませんね」
笑おうとして失敗したジョシュアは、顔を伏せてため息を吐いた。
拒絶をはっきりと口にされては、惨めに縋り付くのはジョシュアの性には合わなかった。
