ノルダ砦の執務室。
制圧軍の司令官であるアデルは、その一室を職務と休息のための部屋として使っていた。
「すまない、苦労を掛けたな」
「いえ。これも私の仕事の一つですから」
ジョシュアから衛生兵に乱暴をはたらきかけた男を発見し、現在は牢に捕らえてあるという報告を受けた時、アデルは淡い夢の中にいた。
自分は執務机で居眠りをしてしまったというのに、勤勉に働いてくれた副官に向けて、アデルは椅子から立ち上がり苦笑してみせた。
「悪いな。だらしがない司令官で」
罪悪感を誤魔化すアデルの笑いに、ジョシュアは静かな笑みを讃えて首を振る。
「いえ、美しい寝顔に私は見惚れてしまいましたよ?」
「……お前は……」
露骨にしかめられた顔は、形だけでしかないことをジョシュアは知っている。
ジョシュアが男色家であろうと、その対象が他ならぬ自分自身であると知っていようと、偏見を持たずに接するアデルが彼は好きだった。
