その青年は、このノルダ砦制圧軍指揮官補佐。
つまりは、この軍の二番手である。
指揮官のアデルより二歳年上ではあるが、彼もまだ二十代と若い。
ジョシュア・ヒューバード。
ヒューバード家の長男であり、上流貴族には珍しく、権力をあまり好まぬ変り者である。
男は青ざめた顔でジョシュアを見上げる。
ノルダ砦在留中、略奪暴行行為の禁止が指揮官アデルから強く言い渡されていた。
破った者は刑罰に処す。
アデルは本気であり、実際に女性兵士に乱暴をはたらいた二名が彼に切り捨てられた。
メルディの血を流さなかった指揮官は、自軍の命令違反者には容赦がなかった。
「命令違反者の末路を知らないわけではありませんよね?」
敬意の籠められていない敬語の冷たさに、男は背筋を凍らせた。
このままでは、殺される。
体中から、汗が吹き出た。
口の中が乾いて上手く回らない舌を必死で動かし、男は無意味な弁解を勝手に始める。
