ライラは事務的な口調で、至って平静に言葉を紡いでいく。
「元々は向こうの誤解から始まった。だから、無駄な血を流すような戦をすれば、おそらく喜ぶ奴が他にいる」
喜ぶ奴が誰であるか。
それを尋ねる者はこの場にはいない。
ライラは続けた。
「話し合いの場が持てないのなら、こちらから行くしかない。もちろん、王子の身は危険に晒されるし、正直なところ、武力を以てシェーダを屈伏させたほうがずっと楽だ」
「行こう」
ライラの言葉が途切れた瞬間を狙い、イアンは迷いなく言い放った。
身の危険など、構わない。
それで、血の流れない戦いが出来るのなら。
「……王子がシェーダに侵入するならば、兵は少数がいい」
イアンが動くのならと、近衛兵団が立ち上がる。
近衛兵団長は物静かな瞳をライラへ向けると、鍛えられた腕を組み頷いてみせた。
「王を守るのは近衛兵団の役目です。侵入は、我々がお供しましょう」
「それがいい」
近衛兵団の編成についてはライラの口を出すところではない。
誰を連れていくかを選ぶのは、イアンと団長だ。
ライラは近衛兵には深く物を言わず、ノルダ砦へと話を戻した。
