もしも、シェーダ軍が砦を傷付け、駐留している部隊に危害を加えていれば、イアンの感情とは関係なしに、穏便な手段では家臣や民からの不満が出るかもしれない。
だが、あくまでもシェーダの侵攻は良心的である。
武力を以て、と宣言したわりには平和的手段を選んでいるように見える。
侵略者が暴力の限りを尽くさないのであれば、こちらにも話し合いの余地があるように思われた。
(……向こうの王とアデルの意見が、食い違っているのか?)
噛み合わない歯車のようなむず痒い引っ掛かりに、ライラは一つの推測を導きだす。
武力を以ての侵攻を命じたエルク。
武力を利用し無血開城を成したアデル。
この二人の間に意志の統一は成されているのだろうか?
疑問は解決する機会を与えられぬまま、話は進む。
「まず必要なのは、デモンド国境線警備の強化。……ここには、王国騎士団の第一から第八小隊を中心に向かわせたい」
王国騎士団内でも一桁は選りすぐりの騎士たちが集まっている。
呼ばれた小隊の隊長たちは、表情を引き締め頷いた。
