金色の師弟


「その通りだ。僕も宰相も王子の意見に賛成している」

ライラの隣で、白髪混じりの宰相が頷いた。
鋭い切れ長の瞳は、二十年前ならば簡単に女性を射殺す威力を持っていたのだが、最近は専ら口煩いイアンの家臣たちを黙らせるために使われている。
宰相は立ち上がった者たちに無言の視線を送ると、イアンへと頷いてみせた。

「私も戦わずしてシェーダ軍を止めることが出来るのなら、それが最良の決断だと思います」

深々と頭を下げた宰相に対し、大臣の一人が非難めいた声を上げた。

「戦わずと言うが、実際にシェーダはノルダ砦を制圧したのだぞ!我々は被害を受けている!」

「話を聞いていないのか」

冷たいライラの声が、大臣へと浴びせられた。

「損傷軽微、死者はゼロ、怪我人少数となれば、被害などあってないようなものだ」

「しかし……」

「これは十分に交渉の余地があるように、私は思いますが」

宰相と軍師。
政治と軍事の頭脳に睨まれ、大臣は眉をしかめて席に座り直した。