イアンの発言は、エルクへの無意味な糾弾に対する先手でもあった。
全員から返される視線には、様々な色が交じっている。
不安、不審、憤り、困惑、そして、期待。
イアンは、期待に応えるように堂々と顔を上げた。
「シェーダ国の侵攻は、我々がデモンドと手を組んでいるというあらぬ誤解から始まっている。つまり、彼らの侵攻は完全なる悪ではない!」
「何を……」
大臣たちの騒めきには目もくれず、イアンはライラへと真っ直ぐな視線を向けた。
「誤解が元で始まった争いならば、その誤解を取り除けば争いは終わる。我が国には北の軍事大国ドルネアからの脅威がある。よって戦火を拡大し同盟国間に戦争の禍根を残すべきではない。……違うか、ライラ」
高圧的な物言いは、イアンが自身の発言に重みを持たせるために心掛けているもの。
あまり似合わない物言いに笑いたくなる気持ちを堪え、ライラは静かに頷いた。
