金色の師弟


イアンがルイから書状を受け取ったとき、誰かが息を飲む音がはっきりと響いた。
王家の印が押された書状を、イアンはゆっくりと開いた。
王家の印であれば、何者かが盗み勝手に使用することも出来るだろう。
だが、文章に目を向けたイアンは淡い希望をあっさりと打ち砕かれる。

そこに並んでいたのは几帳面に角張った、親友の字……。
間違えようもない、エルクの直筆であった。

イアンは震える指で辛うじて書状を掴むと、何度も何度も文字を追い掛けた。
読めば内容が変わるわけではない。
わかっていたが、イアンは文字を追い掛ける作業を止めることが出来なかった。

「……エルク……」

弱々しく呟かれた親友の名と共に、イアンは椅子へと全体重を預けた。
悔しさを隠し切れずに奥歯を噛み締め、涙を押し殺すかのように、片腕で目元を押さえ付けた。

しばらくその態勢で押し黙っていたイアンは、青い瞳に光を宿し、ゆっくりと身体を起こした。
そして、力強く立ち上がると書状を机へと叩きつける。