金色の師弟


その上、ユリアの話によると死者がいない。
つまり、ノルダ砦全員と新たに砦を占拠したシェーダ軍とで、人間の数は許容範囲を越えているはずだ。

(アデルが補給などという初歩的なミスをするはずがない)

それを本人に言えば、買い被り過ぎだと笑われて終わるだろう。
アデルの真意を読み取ろうにも、ライラは彼の思考をなぞる事は出来なかった。

(シェーダの策士め……)

心の中で悪態を吐きながら、ライラは目の前で交わされる不毛な言い争いに辟易としていた。
ノルダ砦の油断を詰る声、実力不足を唱える声、これからを嘆く声。
イアンの元には優秀な部下が多いが、そうでない者のほうがずっと多いらしい。
ライラは会議室で沈黙を守る者たちの顔触れを確認した。
イアン、宰相、将軍、騎士団長、近衛兵隊長、ディン、ユリア、そしてルイ。
気丈に振る舞いユリアの肩を抱いているルイであったが、その顔は微かに青い。