金色の師弟


反撃の余地を与えられずに落とされたノルダ砦は、今はシェーダの支配下にある。
イアンが支配状況について説明を求めると、ユリアは困惑を隠し切れない様子で言った。

「それが……あまり不自由ではないのです」

「え?」

「もちろん、メルディの者は皆囚われ牢に入れられていますが」

ユリアは一端言葉を止め、思案げに視線を彷徨わせた。
急かす者は、いない。
囚われた経験などないので比べようはありませんが、そう前置きしてユリアは口を開いた。

「……恐怖感が、ないのです」

これには、誰もが訝しむような視線を送った。
ユリアは、更に詳しく状況を説明しようとする。

「一日三食はしっかりと食事を与えられ、暴力を奮う兵士もなく、我々に危害を加えないということを徹底しているようでした」

ユリアの説明に、ライラが眉をしかめた。
戦争で大切なものは補給、つまり食物である。
砦内の貯えとシェーダから持ち込んだものを合わせれば膨大な量になるだろうが、それはあくまでも自身の兵たちを食わせていくという意味でしかない。
捕らえた捕虜たちにもしっかりと食わせていては、食料が底を付くことなど目に見えている。