金色の師弟


「無様な!」

小隊長であり、前王の時代からメルディに仕えている老将の一人が机を叩いた。
室内に響いた鈍い音に、ディンが眉をしかめた。

「私はノルダ砦の将の判断に間違いはなかったと思います」

「何!」

怒りに目を光らせ、老齢の隊長はディンを睨み付けた。
ブラウンの瞳を静かに揺らし、ディンはその視線を真っ向から受けとめる。

「ノルダ砦はドルネア侵攻防御の要。圧倒的不利下に置いて戦いを長引かせれば、それに気付いたドルネアは好機と見て攻め込んでくるでしょう」

「わしも同意見だ。それに、長引けば長引くほど、砦自体が疲弊していく。ノルダ砦が機能を失うということが何を意味するか、貴公らならば説明せずともわかるであろう?」

重みのある将軍の言葉に、老齢の隊長は唇を噛み、忌々しげにそっぽを向いた。