「ルイ……、ルイっ……!!」

目の前に現われた親友の姿に、ユリアの足の力が抜けた。
ぺたりと座り込みながらも、その手はしっかりとルイの腕を掴んでいる。

「彼女は私の友人で、ノルダ砦のユリアです。身元は保障します」

ルイは崩れ落ちたユリアを支えるようにしゃがみ、門番たちを見上げた。
近衛兵であるルイに言われれば、門番たちはこれ以上なにも言えなかった。
小刻みに震えるユリアの背中を撫でながら、ルイは穏やかな声でユリアを落ち着ける。

「どうしたの、ユリア。大丈夫、イアン様は話を聞いてくださるわ」

「ルイ……」

ユリアは俯いたまま、大きく息を吸い込む。
そして、彼女が遠く離れたノルダ砦から王都へと駆けてきた理由を、吐き出した。

「ノルダ砦が……落ちたの……」

泣きだしそうな震える声が、はっきりとルイの鼓膜を震わせた。
思考が停止する。
何十年もドルネアの侵攻を防いだ難攻不落の砦が、落ちた。