金色の師弟




愛おしい漆黒が、優しく揺れた。
何度もまめを作り潰しを繰り返し皮が堅くなった手を広げて、柔らかな黄金の瞳を細めたその人は、目を離せば消えてしまいそうな程に美しい。

(アデルさん!)

叫んだ名は音にならず、ルイの喉で握り潰される。
離れないでと伸ばした手は、差し出された手に届かない。
柔らかい笑顔に哀しさを滲ませ、アデルは差し出した手の平を握り締めた。

(待って、アデルさん!)

行かないで、と縋り付こうとしても鉛のように重い腕は持ち上がらなかった。
ルイの膝が、崩れ落ちる。
身体が、動かない。
絶望に支配されたルイは、唯一動く首を持ち上げアデルを見上げた。

「会いたい!」

唯一吐き出せた言葉は、誰にも言わずにいたルイの本心。
会いたい。
アデルに会いたい!

その手に触れたい。
その声を聞きたい。
その笑顔を見たい。

夢であることは、始めからわかっている。
現実は届かない。
なら、せめて夢の中でくらいは。
そう思うのは、間違っているのだろうか。