イアンは深い溜め息を吐いた。
他国の侵攻の可能性に対してではない。
親友に裏切られるかもしれないという恐怖からの疲労であった。
「……ライラ、そういえば三つ目の可能性は?」
純粋に疑問を抱き首を傾げたイアンに、ライラは溜め息混じりの苦笑を零した。
「向こうの王が能無しという可能性だ」
そうであれば、有り難い。
ライラの発言に、イアンは目を丸くする。
そして、肩の荷を下ろすように細やかな笑みを零した。
「ははっ……それはちょっと楽観視し過ぎかな」
「あぁ、僕もそう思う」
肩を竦めたライラに、イアンは弱々しい笑みを浮かべていた。
笑うことで、気持ちを誤魔化そうとするように。
健気な若き王の姿に、ライラは目を伏せた。
