悪い方向に物事を考えるのは、ライラの悪い癖だ。
だが、彼はそうせずにはいられない。
常に最悪から目を背けず、対応していく覚悟を以てイアンの前に立っているのだ。
「どちらにしても、デモンドとの国境にはあまり兵を置き過ぎないほうがいい」
「……そうだね。デモンドが進軍出来るルートもそう多くはない。その辺りに注意を払おう」
「それと、シェーダへと伝令だ。それで何かしらの動きが出る」
「……」
イアンは黙って頷いた。
ライラが口にした二つ目の可能性を考えたくない。
態度で示された柔らかな拒絶に、ライラは目を伏せた。
考えたくないのは、ライラも同じだった。
一つ目の可能性が当たりなら、メルディ・シェーダ合同軍として動くことが出来る。
これは互いに背後を取られる心配もなく、戦いやすい。
だが、もしもシェーダが敵となれば、メルディは敵国に挟まれての戦いとなる。
さらに、長引き疲弊してしまえば、ドルネアも黙ってはいないだろう。
