感情論を、ライラは好まない。
だが、三人の関係を知っているライラとしては、不確定な感情論を思考に入れざるをえなかった。
イアンが絶望に歪んだ瞳で、机を睨み付けた。
「エルクは……そんな奴じゃない……」
「僕は、あくまでも可能性を話している。正直、そう高い可能性だとは思っていない」
これは、半分は嘘だった。
顔を上げたイアンは、僅かだか安心した様子だった。
(シェーダには、エルク王の隣には、アデルがいる)
大嫌いだが、ライラが一目置いている隣国の将。
彼がそばにいる限り、エルクが道を間違えることはないとライラは信じていた。
だが、もしもアデルの言葉がエルクに届かなかったら。
エルクが聞き耳を持たなくなったり、他の家臣がアデルをエルクから遠ざけたりしたら。
もしも、デモンドと手を結び利益を得ようとする者が、エルクを唆し、アデルを排除したら。
結局は感情論に至るが、ミーナを奪われたことに対してイアンを心から祝福出来ているかはわからない。
些細でも、その心の闇に付け込まれたら……。
