金色の師弟


イアンに対し最も効果的であり、最も残虐な可能性。
思い至った自分を呪いたいほど、ライラは後悔した。

「二つ目は、デモンドが自分達に注意を向けたいという意図を持っているという可能性」

それだけで、イアンはライラの推測を七割程理解した。

「つまり、デモンドの国境警備に重点を置いて、手薄な北からドルネアが侵攻してくるということか」

「いや」

ライラが、首を横に振った。
後ろで纏められた緑の髪が、獣の尾のように揺れている。
そもそも、ライラにはドルネアがテルーベ大河を渡り進軍してくる可能性が高いとは思えなかった。
テルーベ大河は広大で、両岸の距離はかろうじて向こう岸が見える程だ。
最も近づいている部分でも、投石機の射程には入っていない。

メルディ国には、その最も近い部分に防御要塞を建設している。
シェーダとの国境にあたる山の中、崖に近い場所に建てられたノルダ砦はテルーベ大河を一望でき、渡ろうとする船があれば投石機や弓兵隊の餌食となる。
テルーベ大河を監視するこのノルダ砦がある限り、川を渡り進軍するというのは難しい。
崖上という高い位置にあるため、大河からの攻撃は届かず、難攻不落の砦だ。