アデルはふっと頬を緩め、空いている手でルイの頭を胸の中へと抱き寄せた。

「凄いよ、お前」

ルイはアデルの腕の中で首を傾げた。
凄いと言われても、意味がわからないのだ。
ルイを抱き締め、アデルは喉から笑い声を上げる。

「打算も何もない一言ってのは、こんなに心に響くのか」

「アデルさん?意味が……」

「わからなくていい。……いや、わからないからいいんだ、きっと」

計算ばかりの自分には出来ないことだ。
この単純なルイの言葉は、アデルが頭を使って吐き出される言葉よりも、人の心を動かすだろう。
恋心の正体も気付かぬうちに、動かされ続けてきた結果かもしれない。