身体を包む熱が、確かにエルクの味方だと語っていた。
傍にいると、言ってくれていた。

「イアンが……ミーナに婚姻を、申し込む、つもりだ」

「はい……」

アデルの肩に顔を押しつけ、エルクは途切れ途切れに声を吐き出した。

「あいつらの気持ちくらい、知っている。きっと……ミーナは、承諾、するだろう」

エルクは息を詰まらせる。
アデルが腕の力を強めたからだ。
澄んだ黒い瞳から、涙が溢れだす。
夜空から落ちる流れ星のような涙がエルクの頬を伝い、アデルの肩を濡らした。

「好き、だったんだ」

誰を、とは言わない。
言う必要はない。

「好きなんだ」

子供のように涙を流し続けるエルクの体を、アデルはただ抱き締めていた。
昔は、よくこうして泣きじゃくるエルクを抱き上げて慰めていた。
その時は持ち上げられる重さだったのに、今ではアデルの腕の中で窮屈そうに涙を流している。