「今後予想されるいくつかの事態に対し、アデルの意見を聞いていただけだ。見せ物じゃない」
珍しいと好奇の目に晒されることが、ライラを苛立たせているらしい。
「お前がアデルを頼るとは、意外だな」
「頼ってなどいない。話を聞いただけだ」
ライラはきつくエルクを睨むと、すぐに不快そうにそっぽを向いた。
それを頼ると言うのでは?とエルクは思ったが、あえて口にすることでもない。
「ライラの考えは興味深いですから。出来るなら、毎晩部屋にいてもらえると話が出来て楽なんですけど」
最後の方は、部屋にいないライラに対する軽い嫌味であった。
対してライラも、表情を変えずに言い返す。
「浮いた噂の多い男に気を遣っているつもりだが」
思わぬ反撃に、エルクは思わず吹き出した。
「……ひどいですよ、エルク様」
「っくく……すまん。あまりにもライラが的を射ていたから面白くてな」
エルクが笑っていようが、ライラは変わらず仏頂面のまま。
これでは冗談か本気かが判断しづらいが、アデルは気にする様子もなく微笑んだ。
