エルクの言葉が強がりであることは、明らかだったからだ。
王弟よりもマシというのは本心だろうが、相手がイアンでなく自分ならよかったのにと思っているはずだ。
俯いたイアンを、エルクは黙って見つめる。
そして、握り締めていた拳でイアンの頭を殴り付けた。
「いっ……!」
ガツ、と鈍い音がし、イアンは両手で後頭部をさする。
容赦なく振り下ろされた拳の攻撃力は中々のもので、イアンはしばらくその体勢のまま呻いていた。
「……ふう、すっきりした」
平然と言ってのけ、エルクは立ち上がる。
イアンは頭を抱えたまま、視線だけでエルクを見上げた。
複雑な笑みを浮かべながらも、エルクは必死で笑顔を作っていた。
「お前とミーナが婚約してくれれば、デモンドの問題は解決だ。手っ取り早い。初めからこうしていればよかったものを」
「いや、でもミーナの気持ちは……」
痛みが尾を引き、声からは覇気が失われている。
そんな情けない親友の姿を、エルクは鼻で笑ってやった。
