同盟国のバランスを崩したくない。
イアンは以前ルイにそう言った。
だが、それは建前でしかない。
本当は、エルクとミーナを失いたくなかっただけなのだ。
その気持ちはエルクも同じ。
どちらかとミーナが婚姻を結べば、関係は変わってしまう。
どちらも大切だから、選べなかった。
「……それを口にするということは」
エルクの言葉を遮るように、イアンは目を開けるとエルクに向けて弱々しく微笑んだ。
「結婚を、申し込もうと思う」
「……」
エルクは、黙った。
「もちろん、断られても構わない。ただ、ミーナが本当に好きな相手と結婚してくれればそれでいいんだ」
イアンは、ミーナの好意に気付いていない。
エルクはとっくに感じているというのに。
「……ミーナは、お前を好きだろ」
「え……?」
口をぽかんと開けて、目を丸くするイアン。
間抜けな顔をひっぱたきたくなりながらも、エルクは深いため息をついた。
