イアンは弱々しく口元を緩めると、罪の告白をするようにゆっくりと口を開いた。
「……ミーナが、好きなんだ」
二人の間を、一陣の風が駆け抜ける。
光を反射し輝くイアンの濃紺の髪と、光を吸い込み照らされたエルクの漆黒の髪が風に舞う。
エルクは片手で髪を押さえると、そこで初めてイアンから目を逸らした。
「……知ってる」
「うん」
「俺も、そうだから」
「うん。……知ってた」
ミーナが気付いているかはわからない。
だが、少なくとも二人は互いに恋敵であることを知っていた。
そして、無二の親友であることも事実。
だから、何も出来なかった。
三人の関係を変えたくなくて、大切に、壊れ物を扱うように距離感を保っていた。
