金色の師弟


午後を丸々休息に当て、イアンとエルクは久しぶりに手合せをしていた。
修練場には二人以外に誰もいない。
静まり返った空間で、金属のぶつかり合う音と二人の息遣いが響く。

「あ……」

不意に漏れたイアンの声。
強い力で剣を弾かれ、取り零してしまう。
ぽと、と力なく落ちた剣を見、エルクは嬉しそうに口角を釣り上げた。

「十三戦、十勝三敗。イアン、負け越してるぞ」

「いい線行ってたんだけどなぁ……」

イアンは剣を握っていた手を開いたり閉じたりと動かして、落ちた剣を拾う。
二人の実力に大差はなく、手合せの結果は気を抜いた方が負けると決まっていた。

エルクは、表情を引き締めた。
イアンは手を抜いてはいない。
ただ、集中していないのが手に取るようにわかった。