ルイは必死に手を伸ばすが、それは虚しい努力であった。
「本当に不味いんです、食べないほうがいいですよ」
「一応『漆黒の風』と名が通っている男が敵前逃亡は出来ないだろう?」
「それは敵ではなくて、クッキーみたいな何かです!」
クッキー、とは断言出来ない自分が悲しい。
だが、ルイには悲しがる時間はなかった。
アデルはルイに背を向け、皿を胸の高さまで下ろすとひょいと一枚口に入れた。
ライラもクッキーを手に取り、一口齧る。
「……」
ライラは、自分が齧ったクッキーと見つめあった。
「……」
今まで様々な戦術を考え、敵を撃退してきたライラであったが、このクッキーにはどうすれば勝てるのか思い浮かばなかった。
