「俺は弱くて頼りなくて、お前に甘えてばかりのクソガキだが」
アデルの顔を見ることはせず、エルクは立ち上がった。
真っ直ぐな黒髪の隙間から覗く耳は、微かに朱に染まっている。
「……お前の幸せを願っているのは本当だ」
「エルク様……」
「っ……俺はもう帰る!」
足音を気にせず、音を鳴らしながらエルクは部屋を飛び出した。
取り残されたアデルは、ただ茫然と乱暴に閉められた扉を見つめるのみ。
「それを言うために、わざわざ……?」
思わず、アデルは笑みを零した。
今まで、心配をするのは自分の役目だったのに。
少し悔しくて、妙に嬉しい。
アデルは微笑を浮かべたまま立ち上がり、窓を開けて外を眺めた。
小走りに走り去るエルクの背中に、優しく微笑んで。
