「疲れているのか?」
珍しく不安げなその声に、アデルは目を開けて飛び起きた。
部屋に入ってきたのは、アデルにとって唯一の主、エルク。
慌てて立ち上がろうとしたアデルに、エルクは苦笑するとそのままベッドの隣に腰掛けた。
「そのままでいい。世間話に来たのだからな」
「なら、呼んでくださればよかったのに」
「世間話で呼び出すなんて馬鹿馬鹿しい」
アデルの言葉を一蹴し、エルクは少し不機嫌な顔をした。
「お前、俺がやった弓を無くしたんだってな」
「あ……」
アデルが山から帰ってから、慌ただしく帰還したためエルクに謝罪をする暇がなかったのだ。
アデルは深々と頭を下げる。
「申し訳ありません」
「……まぁ、いい」
エルクは怒っていたのではない。
ほんの少し、アデルを困らせてみたかったのだ。
