「……あんなアデル、初めて見たわ」
ぽつりと、ノルンは呟いた。
言葉にはしなかったが、ディンも同じことを思っている。
ディンはシェーダにいるときのアデルのことはよく知らないが、メルディ内で女に声を掛けられている姿はよく見かけた。
そして、その対応もしっかりと覚えている。
涼しい微笑を浮かべ、形のいい唇から、ディンでは到底思い浮かばないような甘い言葉を囁く。
流し目を送れば、見つめられた女は頬を染める。
アデルの容姿は確かに端整ではあるが、それだけでは人の心は掴めない。
アデルは、人の心に取り入ることに関しては、弓の腕以上の才能を持っていた。
それを知っているから、ディンはアデルに忠告をしたのだ。
ルイは、あまりにも純粋すぎる。
だから、アデルに遊ばれるのでは可哀相だ。
だが、対するアデルの返答はあっさりとしたものだった。
