アデルは腰に手を当て、ゆっくりと息を吐き出した。
体内の空気を入れ換えると、アデルは晴れ晴れとした笑みを浮かべる。
女性関係を責められていた男が浮かべるには場違いな微笑みだ。
「ディン。お前の言い分はわかった」
アデルの笑みの理由がわからず、ディンは眉をしかめた。
だが、アデルの方は満足した様子で二人に背を向ける。
二、三歩進むと首だけで振り返り、彼によく似合う気高く強気な笑みを浮かべた。
「俺が本気かどうかは、お前が判断すればいい。だから、見ていろ」
そして、見誤るな。
風が吹き荒れ、耳の高さ緩く結んだアデルの黒髪が揺れた。
口元に緩く弧を描き、アデルは前を向き歩きだしてしまった。
残された二人は、黙って揺れる黒髪を見つめていた。
