「俺はお前が欲しい。地位も名誉もいらない。何もいらない」
「そんな……冗談を……」
「俺は吐いていい嘘と悪い嘘は心得ている」
アデルは身体を離すと、僅かに苛立ったような顔で、赤くなりながら自分を見上げるルイの頬に触れた。
「これは……−−」
「!」
アデルが矢のような速さでルイの唇を塞ぐ。
余計な言葉は許さないと言うかのように。
ルイの空色の瞳が、これ以上ない程に見開かれた。
視界を埋める、漆黒の髪。
唇に触れる熱は、灼熱。
ルイが顔を背けようとしても、アデルは頬に触れていた手で顎を掴んでいるので動けない。
触れるだけのキス。
わざとらしく音を立てて短い口付けからルイを解放すると、アデルは真っすぐな瞳でルイを見据える。
「……吐いてはならん嘘だ」
標的を射ぬく、金色の狩人の瞳。
射ぬかれたルイは、頬を朱に染め肩を震わせた。
