ディンとアデルが手合せをするという話はいつのまにか広まり、木々や岩の設置された自然豊かな修練場にはギャラリーが押し掛けていた。
メルディの兵や滞在中のシェーダの兵はもちろんのこと、メイドや庭師、宰相に大臣と小さなお祭りのような騒ぎになっていた。
それもこれも、一番面白がっているのが若き国王であるイアンだからなのかもしれない。
「アデル将軍とディンの試合は見物だよね」
「はい、とてもためになります」
ルイは隣で微笑むイアンの言葉に頷いた。
二人は観客の中の最前列で開始の時を待っていた。
ルイとそう変わらない年齢のイアン。
前王が二年前に亡くなったばかりで、ようやく政務にも慣れてきた王。
彼の性格は他人への思いやりに長けており、兵達からの信頼や忠誠も厚い。
穏やかな目元と青い瞳。
肩に触れるか触れないかの濃紺の髪は、緩いクセが付いている。
髪と同じ色のマントと、その色に水を一滴落として薄めたような色をした優美な服が、全体的に穏やかな雰囲気を醸し出していた。
