決して豊かな暮らしではなかった。
満腹になる、ということは滅多になかった。
メルディに凶作が訪れれば、痩せ細ったいもをみんなで分けた。
それでも、ルイは自分を不幸などとは思わなかった。
「生活は大変でしたけど、楽しかったんですよ?」
飢えというものを、アデルは知らない。
上流階級で生きてきた自分には縁のないものだった。
だが、飢えが人を殺すことを知っている。
肉体が死ぬのではない。
心が、死ぬのだ。
そんな環境で、ルイは生きてきた。
美しい心を失わず、真っ直ぐに輝きながら。
生きて、くれた。
「……たくましいな」
アデルの手が、ルイの頭に伸びる。
撫でると思われたアデルの手は、そのままルイの頭を掴み、自分の肩へと引き寄せたのだ。
いきなりのことに一瞬言葉を失ったが、ルイは息を吐きながら、アデルに身を委ねた。
「院長先生がいてくれたから、みんな、苦しくても頑張れたんです」
親を知らない子供たちに、無償の愛を捧げた院長先生。
生きる希望を与え、人に愛されることを教えてくれた。
