金色の師弟


アデルはやれやれと肩を竦める。
そして、ちらりとルイに視線を送ると最後の一口を食べ終え、立ち上がった。

「弟子の手前、挑まれた勝負から逃げるわけにはいかないな」

少々演技掛かった口調のアデルには、強気な笑みがよく似合っていた。

「ようやくやる気になったか!」

満足した様子でにんまりと笑うと、ディンはルイへと拳を突き出した。

「さて、今日こそはお前の師匠を圧倒してやる」

闘志を十分に、ディンは宣言した。
その言葉に、ルイはかっと頭に血が昇り立ち上がった。

「アデルさんは負けません!」

ディンの登場で、食堂中の視線はディンとアデルの二人に集中していた。

しんとした食堂で、予想外に響いてしまった自分の声と、突き刺さる視線にルイはたまらなくなって座ってしまう。

「ルイ、お前はどっちの味方なんだ」

呆れとからかいの交じったディンの言葉で、周囲の兵士たちも笑い声を上げた。
恥ずかしさに俯くルイ。

その頬は、微かに赤い。

まだ若く少女でもあるため、その可愛らしい反応に周囲はからかいたくなるのだ。

「……ははっ。そう言われたら勝つしかないな」

アデルは拳を作り、手の甲で俯いているルイの頭を軽く小突いた。

可愛い弟子の期待を、裏切るような師匠でいるつもりはない。

弾かれたように顔を上げたルイは空色の瞳を輝かせ、笑う。

「はいっ!!」

それはそれは嬉しそうに、少女は頷いた。