それでも、アデルは足を止めなかった。
アデルは背負っていた弓から弦を外す。
ただの棒となった弓を何度か地面に押しつけ、しなり具合を確認した。
アデルは顔を上げ、数歩下がる。
斜面が崖へと姿を変えているため、助走を付ける程の距離もない。
片足を下げ、アデルは踏み出した。
そして踏み切る瞬間に、アデルは弓で地面を押す。
弓は土へと突き刺さり、アデルの身体を支える。
ぬかるんだ土を踏み切るよりもずっと高い安定性。
棒高飛びの要領で、アデルは目の前で手を広げる木へと飛び移った。
「っ、と」
足裏の幅と枝の太さは同じ。
滑りかけた身体を支えるために伸ばした手が、足元より一回り細い枝を掴む。
(折れるな、これ)
そう判断したアデルは素早くもう片足を枝へと付け、手を離した。
そして、幹へとしがみつく。
なんとも間抜けな姿ではあるが、そんなことアデルには何も気にならなかった。
